第70章 忍界大戦4
彼は一度レンのクナイを押し戻して距離を取る。
「理由は…、ない。強いて言うなら、お前が氷室一族だったからだ。」
レンは息を呑んだ。
「知って、いたの?」
「あぁ。知ってた。ついでに言えば、あの試練があることも元々知っていた。」
リヨクはまた動き出した。
蹴り技が繰り出され、レンは腕で防ぐ。
「ああすることはもう決めてあったんだ。」
レンは、その言葉に愕然とする。
「…じゃあ、初めから死ぬつもりだったって…、そう言うのか…。」
ーどうして…。
「何で…、言ってくれなかったんだ…。」
ーそんなに頼りなかったのか…。
「…言ったって…、どうにもならなかっただろ。」
リヨクは悲し気に視線を伏せた。
確かにどうにもならなかっただろう。
ーでも…。
「…でも、あの時はリヨクの方が強かった!お前が生き残るべきだっただろう!?なんで弱かった私を生かしたんだ!」
一番はそれだ。
強い方が生き残る。
当然の摂理だ。
命令なら尚のこと、何故レンを生かしたのか。
リヨクを殺してまで生き残りたいとは、レンは思っていなかった。
「短気は損気だと、教えたろ。変わってないな、お前は」
そう言うと、リヨクは、がら空きだった胴体を蹴り飛ばした。