第70章 忍界大戦4
レンは鶴丸から目を逸らすと、クナイを1本引き抜いた。
ーこれは…、弱かった過去の私への、罰だ。
「そうこなくちゃな。手を抜くなよ。」
リヨクは意地悪そうににやりと嗤った。
ギン!!
レンとリヨクのクナイが交わる。
最初はクナイを持った右手。
次いで左手。
右足蹴り上げ。
相手がのけぞった所を体の芯を狙い、掌底。
それらを全て受けきる。
少し笑えてきた。
気を抜けば泣いてしまいそうだった。
「変わらないな。あの頃のままだ」
「そうだな…。俺は…あの時のままだ。」
攻防は続けながらも無言が続く。
言葉が出てこない。
沢山話したいことがあったはずなのに一つとして言葉に出来なかった。
ただリヨクが目の前にいて、昔の様に、まるで稽古の様に攻撃の応酬をしている事が、ただただ胸をいっぱいにする。
ふと、リヨクが微笑んだ。
「俺は…、お前を生かして正解だったと思っている。」
「え…?」
「強くなったな。」
そう言われて、レンはあの日を思い出す。
首から溢れ出るおびただしい血。
光を失っていく瞳。
冷たく硬くなっていく体。
今でも忘れない。
忘れられない。
「…何で、リヨクは私を生かしたんだ?」
レンの問いに、リヨクの表情が硬くなった。
けれど、レンはずっと聞いてみたかった。
「…理由は…。」
言いかけて、リヨクは口を噤んだ。