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君に届くまで

第16章 江雪左文字の頼み


燭台切がそっと言うと、レンはよろよろと立ち上がり、部屋へ入って行った。
ただ、どうしても近寄ることが出来ない。先程の衝撃が忘れられないのだ。

「大丈夫、大丈夫だから。」

燭台切は何とかレンを宥めすかして江雪の近くまで先導する。

江雪は頭を下げた。

「先程は、大変失礼を致しました。」

「…ご用件は何でしょう。」

頭を下げたままの江雪に問いかけると、江雪は徐に頭を上げ、レンをしっかりと見た。

「主様にお願いがあって参りました。
お小夜を…、お小夜だけで構いません。どうか、お助けください。」

そう言って、手を付き頭を深々と下げた。
それを聞いて、レンは小さくため息をつく。

ーまぁ、1人助ければ自分もってなるよな、普通は…。

レンは困り果てて燭台切を見ると、彼は苦笑してレンを見た。

「僕の言葉は一旦忘れようか。その上で君の好きにしたらいいよ。」

益々、困った答えが返ってきた。
これでは引き受けるしかあるまい。
ただ、問題は誰が玉鋼を取ってくるか、ということだ。

「…分かりました。引き受けます。ただ…玉鋼はどうすればいいですか?私は遠征に行けませんよ。」

遠征はあくまで刀剣の本分。
人間のレンは、あの先へは行けない。

「大将、何の為に俺達を呼んだんだ?」

薬研を見ると、彼は呆れ顔でレンを見ていた。

「僕も行きます!」

五虎退がレンの手をぎゅっと握りながら答える。

「当然、わたくしたちも行きますよ。」

何処からか鳴狐が湧いて出た。
何にせよ、人手があるのは有り難い。

「じゃあ、お願いします。玉鋼は十数個しか無いので、それの10倍は必要だと思われます。」

「わたくし達にお任せあれ!」

「おう!」

「はい!」

江雪はそれを見て少し綻んだ顔を見せた。

「皆さん、よろしくお願いします。」

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