第66章 おわりのはじまり
「大将は焦ると、どうも刀を受け止める傾向にあるな。」
薬研は刀を収めながらレンに向き直る。
「そうですね。咄嗟にそう判断してしまいます。」
「それがいい時もあるが、悪い時もあるぞ。」
鶴丸も手を腰に当てて困ったように笑った。
ここ最近、打ち合いをする度にレンはそのパターンで負けることが多いのだ。
「分かってるんですがね…。」
本人もそれはよく分かっているようで、苦い顔をする。
「すごいすごい!レンに勝っちゃった!」
乱は勢いよく駆けてきて、鶴丸に飛びついた。
「凄いな。よもやレンに勝てるとは。」
「…だいぶ前から負け越してますよ。」
ゆっくりと近づいてきた獅子王がにこやかに言うのを、レンは少し嫌そうに返した。
「最近、鶴さんには勝てなくなってきてるんですよね。」
レンは恨めし気に鶴丸を見る。
「まぁ、そう不貞腐れるなよ。本来はこういう力配分なんだ。審神者が本丸を守り、俺達が審神者を守る。な、乱。」
「そうそう。レンは守られてればいいんだよっ。ボクだって絶対鶴丸に追いついてやるんだから!」
鶴丸が言うと、乱はぴょんと彼から飛び降りて胸を張る。
「けっ…。そんな常識ぶっ壊すまでです。私だって修行すればまだまだ伸びますから。」
「…審神者がそれ以上強くならんでいい。」
悪態をついて仏頂面を浮かべるレンを、薬研が冷静に止める。
これ以上、面目を潰されては堪らない。