第66章 おわりのはじまり
「…何それ。何で話しちゃいけないの?」
「さぁ。表に出せない内容もあるし、行動の一端を話すことで、計画が瓦解することを危惧したんじゃないですかね。」
大和守は不愉快そうに顔を顰めてため息をつく。
「どこのお偉いさんも碌なもんじゃないよね。」
「そんなもんじゃないですか?」
「でもそんな忌々しいものが消えたんなら万々歳じゃん。何がいけないの?」
そう聞かれて、レンは一瞬言葉に詰まる。
「いや、私もそう思っていたんですけどね…。何かいざ消えてみたら、びっくりしたというか、落ち着かないというか。」
「へぇ。そういうもの?」
「殺しても死ななそうな奴だったんで。死んだのが意外というか、腑に落ちないというか…。」
レンは、微妙な顔付きで鏡に映る自分を見る。
「ふ〜ん…。」
僕だったら手放しで喜ぶのになぁ、と思いながら、大和守は鏡越しにレンを見る。
「…まぁ、今すぐどうこうなる訳でもないし。暫く様子をみてみたら?
いつもと違うことが起こって混乱しちゃってるだけかもよ?」
「…そう、ですよね。消えたから…だから何だ、って話ですし。少し様子をみます。」
「うん。何か変化があったらまた教えてよ。僕も一緒に考えるし。」
「はい。ありがとうございます。」
そう言ってこちらを見上げるレンはいつもの顔で、大和守はほっとする。
「じゃあ、行こっか。まだ中に入ってる人もいるし。」
大和守はそう言って、レンの手を引いて促した。