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君に届くまで

第16章 江雪左文字の頼み





ーー翌朝ーー

薬研の薬が効いたのだろうか。頗る調子が良かった。
昨日の具合の悪さが嘘のような解放感だ。

レンは寝間着のまま障子の側に座り、少しだけ開けて外を見る。気持ちのいい天気だ。日が当たっているお陰か廊下はほんのり暖かい。

レンは一度障子を閉めるといつもの服に着替えた。
そろそろスペアが欲しいところだが、そうも言っていられない。

着替えが済み、髪を纏めているところに外から声がかかる。

「レンちゃん、起きてるかい?」

燭台切だ。珍しいと思いながら返事を返す。

「着替え終わっています。髪を纏めているだけなので入って大丈夫ですよ。」

すっと障子が開き、燭台切が顔を覗かせ苦笑した。

「…女の子なんだから、身嗜みが終わるまでは男を入れたらダメだよ。」

はて、とレンは首を傾げる。

「気遣いは無用ですよ。」

燭台切は、困ったように笑う。
レンは、さっと髪を纏め終わると、布団を畳んで隅に置く。
燭台切はそれを見て漸く中へ入ってきた。

「あ、ついでに中央だけでいいので障子を全て開けてください。」

そう言って、レンは右側の障子を開け始める。
燭台切はレンを手伝い、左側を開け始めた。

やはり天気がいい日は、換気をすると気持ちがいい。
レンは腕を大きく上に伸ばすと燭台切に向き直る。

「今日はこんな朝早くにどうしたんですか?」

「朝ごはん作ったんだよ。それでレンちゃんを誘いに来たんだ。」

「朝ごはん、ですか?それは食べたいですが…。」

突然だな、とレンは疑問に思う。

「まぁ、いいからいいから。昨日も二日酔いであんまり食べられなかっただろう?」

「それは、まぁ。そうですね。」

「それじゃ、行こうか。厨に用意してあるから。」

「ありがとうございます。」

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