第65章 演練大会ーその後ー
「細菌感染ですね。」
医師は淡々とレンの症状を診ていく。
「風邪もひいているようなので、抵抗力が落ちていたんじゃないですかね。そこへ怪我が重なって熱を出したんじゃないでしょうか。
それに、怪我してからすぐに消毒しなかったでしょう?」
「はい。怪我から大分経ってからの手当てになってしまいました。」
燭台切が代わりに答える。
「それも原因の一つでしょう。
3日分抗生剤を出しますから必ず飲みきってください。それと鎮痛剤も出しておきます。」
「…に、入院は…?」
毛布を被ったレンが怖々聞くと、医師は目を瞬かせる。
「入院の必要性はありませんよ。自宅療養で十分ですが…。入院したいですか?」
その言葉に、レンは慌ててかぶりを振った。
「ゔ…。」
その瞬間くらぁっと目眩がして体が傾き、燭台切が慌てて支える。
「処方箋を出しますから待合室でお待ちください。」
医師は淡々と言いながら机に向かい、カルテを書き始めた。
「ありがとうございました。」
燭台切がお礼を言って、レンを横抱きに抱き上げると薬研が気づいてドアを開けた。彼等もそれに続いて外に出る。
「よかったぁ。これで一安心だね。」
加州は肩の荷が降りたように、ほっと胸を撫で下ろす。
「…ったく、人騒がせな。はじめから素直に医者にかかれば済んだ話だったろうに。」
大倶利伽羅は大きく息をつきながら腰に手を当てる。
「やれやれだな、まったく。」
薬研も大倶利伽羅の隣で一息ついた。
「まぁ、そう言うなよ。レンにしてみたら入院か否かの瀬戸際だったんだからさ。」
そう言って鶴丸は笑う。
「何にせよ、これで心置きなく本丸に帰れますね。」
「レンを早く寝かせてあげたい。」
江雪と小夜は、船を漕ぐレンを見つつ微笑んだ。
「そうだね、帰ろうか。」
燭台切は、再びレンを抱き上げた。