• テキストサイズ

君に届くまで

第65章 演練大会ーその後ー



それを聞いたレンは、素早く布団を蹴り上げ逃げ出した。

「やると思ったぜ!」

誰も反応出来ずにいる中、薬研は素早く動いてレンを捕まえる。
いつもなら簡単に振り解かれるであろう手は、力なく踠いている。

「加州!」

薬研が怒鳴ると、加州は弾かれたように動き出した。

「鶴丸も!」

「お、おう!」

加州に腕を取られて、鶴丸も漸く動き出す。

「大将、観念しろ!」

「い、いやだ…!」

往生際悪く、尚も踠いているレンに薬研が言い聞かせる。

「まだ、入院するとは決まってないんだから。診てもらうだけ診てもらえ。」

加州と鶴丸もレンを取り押さえながら言い募る。

「そうだよ。ちゃんと診てもらった方がいいよ。」

「仮に入院と言われても、本丸で養生出来るように俺達も頼んでみるから、な?」

その様子を見ていた大倶利伽羅は呆れ返って、ため息をつく。

「…まったく。子供か、あんたは。」

彼は毛布を持ってレンに近づくと、淡々とロープを突き出す。

「選べ。自分の足で医務室に行くか、ロープで縛られて運ばれるか。」

「どっちも嫌です…!」

レンは力なく怒鳴ると、弱々しく踠きながら後退る。
それを見た大倶利伽羅は目元を険しくさせた。
どうやら我慢も限界に達したらしい。

「決まりだな。鶴丸、そのまま逃すなよ。」

「え…、え!?」

大倶利伽羅は薬研にロープを渡すと、器用に且つ手早く、毛布でレンを包んでしまう。
薬研も手早くロープでぐるぐると縛っていく。

「お、横暴です…!抗議します…!」

「あんたの言い分を聞く気はない。」

「年貢の納め時だぜ。た〜いしょ。」

レンが焦りながら言い募るも、大倶利伽羅と薬研は素気無く返すだけだ。

「ま、まぁ…、いいか。」

「…しょうがない。時間切れってヤツだね…。」

鶴丸と加州は呟きながら、心の中で合掌する。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp