第64章 演練大会ー2日目ー
「胴体は無事だと思います。手足を主に掠りましたから。」
申告通り、手足には大小様々な傷が出来ていて、血も滲んで痛々しい。
「…本当に自分の血は怖くないんだな。」
レンの頭上から声がかかり見上げると、鶴丸が肩にタオルをかけた状態で覗き込んでいた。
時折髪から雫がぽたぽたと滴れてくる。
「自分のだし。っていうか髪をちゃんと拭いてください。滴れてます。」
「ははっ。悪いな。」
鶴丸は悪びれる様子もなく、飄々と笑って退いた。
「太腿の所が一番大きいかな。少し熱を持ち始めてるから、腫れるかもね。」
燭台切が太腿の傷の周りにそっと触れる。
「やっぱり病院行った方が…」
「嫌です。」
病院と聞いて、レンは即座にそっぽを向く。
「レンったら。」
加州は困り顔だ。
だが、嫌なものは嫌だ。
入院してただ寝てるだけならば、本丸で寝て過ごす方がよっぽどいい、と心の中でごちる。
頑ななレンの様子に、彼等は揃ってため息をついた。
「じゃあ、しっかり消毒しようね。」
燭台切は、所謂赤チンを取り出すと、液を染み込ませたガーゼを傷口に当てた。
「いててて…。」
痛みに思わず顔を顰める。
だが、消毒はやっておくに限る。
するとしないとでは、治りが断然違う。
消毒をした後は、加州が包帯を巻いていく。
燭台切は、その間に他の傷にも消毒をしていく。
二人三脚でテキパキと処置を終え、皆で一息ついた。