第15章 二日酔い
レンはゆっくりと起き上がると、薬研から紙包を貰い、五虎退からは水を受け取った。
紙包を開くと一気に口に流し込む。独特の苦味と臭みが口いっぱいに広がり顔を顰める。洗い流すように水を一気に流し込んだ。
その様子に薬研は目を丸くする。
ー疑っていないのか?
「…毒かもしれないぜ?」
その言葉に、今度は五虎退が目を瞠る。
「そ、そんな…!?」
おろおろとしだす五虎退を宥めるように、レンは彼の肩を叩いた。
「まず無いでしょうね。」
「何で言い切れる?」
「殺す方法がおかしいですよ。殺したいなら、態々私を起こしてまで毒を盛るのは変ですね。さっき私は寝ていたんだから、その間に首を切るのが妥当です。」
「おっかない御仁だな。」
薬研はそう言って肩を竦める。
「更に言えば、あなたは五虎退の前で私を殺せない。よって、これは毒の可能性が限りなく低い。」
薬研はレンの言葉を聞き、怪訝に思う。
「五虎退から懐かれてると思っているのか?」
「と言うより…。」
レンはバーベキューの時を思い出す。
五虎退は、乱の背後から皮を剥いだ鹿を見て涙目で震えていた。
「五虎退は人間を含め、生き物が死ぬ場面を見るのが苦手なんじゃないですか?それを兄弟であるあなたが知らない筈ないと思いますし。」
「生き物が死ぬって…いつ出会したんだ?そんな場面?」
「いつって…つい最近。バーベキューで皮を剥いだ鹿を見せました。今にも倒れそうな程、震えてましたよ。」
五虎退は顔を赤くして恥ずかしそうに俯いた。
「…バーベキュー…?」