第64章 演練大会ー2日目ー
その斬撃を、レンは横に飛んで避けると、後ろに飛びながら距離を取る。
ーやはり狙いは今剣か。
だが、折ると聞いてしまえば素直に渡そうとは思えなかった。
「断る。誰がほいそれと渡すものか。一昨日来やがれ。」
レンは器用に片手で今剣を抱えたまま、無謀にももう片方の手で中指を立てた。
視界の端では、鶴丸が髪を掻きむしってるのが見えるが、構っていられない。
ーこんな胸糞悪い話を聞かされて、大人しくなんてしていられるか。
「残念だな。”お前なら”楽に逃げられただろうに。」
鶯丸は追撃の手を緩めることなく、淡々と言い放った。
しかし、気になる言い回しをする。
「…お前ならってどういう意味だ?」
レンは逃げ回りながら鶯丸に問うと、別方向から刀を突き出されて慌てて避ける。
「そのままですよ。どういう意味かはあなた自身がよく知っているのではありませんか?」
小狐丸だった。
ー正体がバレている?
けれど、変化の術などこいつ等は知らない筈だ。
それに、加州清光でないと知っているのは私達以外には知らない筈。
やはりこいつ等が清光を…。
レンは苛立ちを滲ませながらも、反撃出来ずに歯噛みする。
彼等はレンを冷たく見据えながら彼女の動きを予測して、次々と刀を振り下ろしていく。
避けきれず、その内の一手を喰らってしまう。
「くっ…!」
大腿をやられてしまった。動けない程深くはないが、決して浅くもない。
「これで終わりですね。」
レンの後ろを一期一振が捉える。
囲まれた。
こうなったら出し惜しみしている場合ではない。
せめて、氷槍を出そうと印を組もうとした時、目の前の鶯丸が目にも留まらぬ間に横真っ二つになり、シャンっと鈴の様な音と共に消えてなくなった。
「…主を害する者は許さない…。何人たりとも!!」
鶴丸だった。
目をぎらつかせ、見たことがないくらい怒りに満ち溢れている。
「…え?」
ヤバい、と思った次の瞬間には、鶴丸はレンを通り越して横一線に薙ぎ払っていた。
その剣は、一瞬にして一期一振と小狐丸を屠ると同時に大地も大きく抉る。