第64章 演練大会ー2日目ー
「これは避けられるかな!?」
後方で突然声がかかった。
「……!」
振り向く暇もなく、気配を読んで太刀筋を避ける。
視界の端に映った衣の色から察するに鶯丸だろう。
ー危なかった…。伽羅さんの方に気を取られすぎてしまった。
レンは、追撃を避けるためにそのまま走り出す。
「加州!!」
鶴丸の声が聞こえるが応えている余裕はない。
左後方からもレンを追いかける気配を捉える。
鶯丸の斬撃を避けながら見ると、小狐丸が迫ってきていた。
「俺一人に全員でかかるとは、随分だな。」
レンは鶯丸を挑発しにかかった。
黙々と急所を狙われるのは、些か疲れる。
攻撃の手をなんとか乱したいところだ。
「ならば、その手に抱いている今剣を放ってしまえばいい。」
狙いは今剣か?
鶯丸は施されている呪のことを知っているのだろうか。
「放ったらどうするんだ?」
「折るさ。弱者は足手纏いだからな。」
「…仲間じゃないのか?」
「仲良しごっこをすることに何の意味がある?俺達は刀剣だ。強さが全てだ。」
嘗て居た”根”を彷彿とさせる言い様だった。
レンは僅かに眉を顰める。
その様子を見ながら鶯丸は可笑しそうに嗤う。
「何故、お前がそんな顔をする?関係ないだろ。今剣は元々我等の仲間だ。」
「そうだな。けど、理解は出来るが納得はしかねる。」
「お前に理解は求めていない。我等のケジメは我等で付ける。さぁ、今剣を渡せ。」
鶯丸は言いながらレンに振りかぶる。
その顔は嘲笑に満ちていた。
体からも薄らと靄が立ち上っている。