第64章 演練大会ー2日目ー
「お小夜!」
「分かってる!」
江雪は小夜と二人掛かりで小狐丸を止めに走る。
「…そうだな。加州の手が塞がってるんだ。そっちから片付けるか。」
和泉守は唸る様にそう言って、レン目掛けて走り出す。
「……!」
大倶利伽羅も和泉守の足止めをしようと刀を振り切るが、僅かに腕を掠っただけだった。
「くそっ…!」
大倶利伽羅は慌てて追いかける。
反撃してくれればやりようもあるが、レンに狙いを定めた途端、彼女以外に目もくれなくなったのだ。
レンは目の前に迫る和泉守の太刀筋を後ろに飛びながら次々に避けていく。
ふと、後ろから気配を感じると一期一振が刀を振り上げて構えていた。
「お覚悟を。」
「……!」
レンは振り下ろされる太刀筋をぎりぎりで躱すと、転がる様に空中回転しながら距離を取る。
すると、すかさず右側から刺し殺す勢いで突きが繰り出され、慌てて太刀筋から逸れるように体を反転させた。
「くっ…!」
レンは躱しきれずに左腕を掠ってしまう。
「あとちょっとだったな。」
仄暗い瞳でレンを見据えながら、和泉守は嗤う。
その後ろから大倶利伽羅が迫り、刀を振り下ろすが、和泉守は鼻で笑いながら躱している。
それでも、大倶利伽羅はめげることなく次々に剣技を繰り出し、徐々に和泉守に傷を負わせていく。
確実に傷は増えている筈なのだが、和泉守は痛みを感じていないかのような動きで以て、悉く太刀筋を避けている。