第64章 演練大会ー2日目ー
「悪い!遅くなった!」
「いや、大丈夫だ。旦那方、助かった。ありがとう。」
薬研が息を切らせながら、加勢した鶴丸に礼を言った。
状況は一気に劣勢から優勢に傾いた。
「こそこそと隠れていればいいものを…。」
鶯丸は現れた鶴丸達に顔を顰める。
「そうはいくか!それにこそこそ隠れた覚えはない!」
鶴丸が斬りかかり、鍔迫り合いとなる。
「ならば手こずっていたのか?短刀と打刀相手に。」
「何…!?」
馬鹿にしたようなその言い様に、鶴丸の怒りは一瞬で頭に血を上らせる。
「鶴丸!」
だが、大倶利伽羅がそれを止めた。
今怒りに任せて動いては、連携が粗雑になってしまう。ここにはレンがいるのだ。
彼は、少し離れた位置にいるレンをちらりと見る。
「……!」
鶯丸の肩越しに、その視線を追って鶴丸もはっとする。
そうだ、レンがいるのだ。
しかも、今は今剣を抱えていて身動きが儘ならない。
「…悪い。そうだったな。」
鶴丸は相手を睨みつけながら刀を払い、距離を取る。
「怒りに任せてしまえば良いのに。そうすれば、痛い目をみなくて済んだものを。」
小狐丸は、虚な瞳でそう言うと、自身の刀を構えて切先をレンに向ける。