第64章 演練大会ー2日目ー
その頃、燭台切は控室に戻っていた。
掲示板には加州に変化したレンが映っている。
プルルル…、プルルル…
『…もしもし。』
燭台切が七海の番号へ電話をかけると、男の声で応答があった。
燭台切はもう一度ディスプレイを確かめてから、話しかける。
「七海さん、だよね?」
『どちら様でしょうか?』
「レンちゃんの所の燭台切です。」
そう答えると、相手は電話越しにため息をついた。
『七海さんの所で合っている。レンさんはどうしたんだ?』
「長谷部君かい?」
『そうだ。』
驚いた…。間違えたのかと思った…。
「ちょっとトラブルになって。清光君がいなくなったんだ。」
『何!?だが、加州は今演練に出ているじゃないか!?』
長谷部が驚きの声を上げている向こう側で、女の声で代わって、という声が聞こえてきた。
『もしもし。何があったの?』
七海の声だ。
「清光君がいなくなったんだ。トイレに立ったまま戻ってこなくて。」
燭台切は焦燥が滲んだ声で状況を説明する。
『でも今演練に出てるわよね?』
七海は、画面に写っている加州をちらりと見た。
どこから見ても加州に見える。
「あれは、レンちゃんだよ。清光君じゃない。」
『は!?』
燭台切が言うと、七海は驚きの声を上げた。
身長も顔立ちも全く別物だ。
俄には信じられない。
信じられないが、燭台切がそう言うのだから間違いないのだろう。
七海は、唖然としながら固まった。
「十中八九相手の本丸が絡んでるから、乗り込んだ方が早いって言って、清光君に化けて演練に出ちゃったんだ。」
『…あの子が先頭切って無茶してどうするのよ…!?』
彼の説明を受けて、段々と頭痛を感じるような気がした。
あれ程言ったのに、と七海は怒りに拳を作る。