第64章 演練大会ー2日目ー
ふと、レンは会ったばかりの頃の鶴丸を思い出した。
あの頃の鶴丸を占めていた感情は、疑念と嫉妬。
その中でも、たぶん燭台切に対する嫉妬は多分にあったと思われる。
「頼む。あの人を返してくれ。私の大切な人なんだ。」
レンは、態とその感情を揺さぶるような言い回しを使った。
今の彼の状態から見るに、審神者から大事にされているとは到底思えなかったからだ。
案の定、大和守の空気が変わる。
「…煩いよ。俺は知らない。知っていても教えない!」
彼はそう言って刀を抜くと、一気に間合いを詰めた。
ガキン!
レンは、加州の刀で以て両手でその攻撃を受ける。
「……!加州!」
鶴丸は”レン”と叫びそうなのを既のところで堪えた。
だが、あっという間の展開に、はらはらと見守るしか出来ない。
彼等は、いつでも斬りかかれるようにと、鯉口を切り、包囲網を敷く。
ガサっという音と共に別の場所から小さな影が飛び出してきた。
江雪は咄嗟に刀で受け止める。
「くっ…!」
「今剣か!」
鶴丸は江雪へと走るが、今剣は難なく避けて、また木の上の木陰へと隠れてしまう。
「くそっ!素早い!」
鶴丸は歯噛みした。