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君に届くまで

第64章 演練大会ー2日目ー



薬研達を待っていると、レンはカサリという音を拾う。
戻ったのかと思い、姿を表すのを待ってみるも一向に薬研達は出てこない。

カサリ…、カサカサ…。

気配は2つ。広い範囲で音が聞こえる。
レンは目元を険しくする。

「見張られてるぞ。」

その言葉に、弾かれたように彼等はレンを見た。
次いで、周囲を注意深く見回し始める。

「どこだ?」

「前方の広い範囲にいると思う。あの木とあの木の後ろが怪しい。」

レンが堂々と指を差して指摘すると、ガサっと大きな音が響いた。

「勘がいいんだな。」

木の影から出てきたのは大和守だった。

「お前、本当に清光か?」

険しい目つきでこちらを見る目は濁って見える。

確かに嫌な感じがする、と彼等は思う。

「…なぁ、それどういう意味だ?」

レンは冷たい目で大和守を見返す。

「…何がだよ。」

「本当に清光か、って聞いただろ?本人を目の前にして、何故その疑問がついて出る?」

レンの問いに大和守は押し黙った。
その様子にレンは目元を険しくする。

「お前、何か知ってるんじゃないか?」

「…知ってたら何なんだよ?」

低い唸るような声音に、レンは俄かに警戒する。
そして、確信を突こうと口を開いた。

「…加州を返せ。」

レンは、低く周りに聞こえづらいように言ったが、大和守にはしっかり届いたようだ。
彼の体から靄が吹き出し、溢れる。

それを見ていた彼等は息を呑む。
彼等には、靄は見えないが気配は分かるからだ。
嫌な感じが濃くなった。

「…何それ。何の話だよ。」

大和守は射殺すような眼差しでレンを見据えるが、彼女は動じない。

「…お前が犯人か。」

レンが決めつけるように呟くと、靄が益々濃くなった。
決定的だな、と彼女は思う。
あとはどうやって吐かせようか…。
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