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君に届くまで

第64章 演練大会ー2日目ー



レンは携帯を燭台切に渡すと、席を立つ。

「ちょっと偵察に行ってきます。時間までには必ず戻るんで、ここで待っていてください。」


「「「待てるか!」」」


彼等は一斉に突っ込んで、レンの手を捕まえる。

「…大将。まずは、電話の内容を教えてくれ。」

「そして行き先をちゃんと言って。」

「場合によっては誰かを連れて行ってくれるかい?」

薬研、加州、燭台切の言葉に、他の面々も大きく頷く。

「…会場を一周見てくるだけですよ?」

レンは渋々、また席に座る。

「電話の内容は…。」

言いかけて、彼女は口を噤む。
場所が場所だけに言うのが憚られる。
かと言って、今からここを移動するのは、次の演練を考えると時間が惜しい。

それを見た刀剣達は寄り集まって小さく纏まる。

「これなら殆ど周りに聞こえないよ。」

加州は声を落として言いながら、その輪にレンを引っ張り込む。

「…ありがとうございます。電話の内容ですが…」

そう言って、レンは今度こそ口を開いた。


「嫌な感じ、ねぇ…。」

「性格が荒むっていうのも想像出来ないね。」

鶴丸と燭台切は腕を組んで考え込む。

「嫌な感じ、って言葉だけ聞くと邪気しか思いつかないんだけど…。そうなるとつまり禍ツ神に近い存在ってことにならない?」

加州が推理する。

「私もそれに近い考えです。細工されていて、嫌な感じがするのであれば、黒い靄が出ているのではないか、と考えました。七海さんも私なら見えるかもしれないと言っていましたし。
見て分かるなら偵察も少しは出来るだろうと。
次に当たるならもうこの会場にいる確率は高いですし。」

レンは自身の考えを伝える。

「それで会場を一周ですか。」

江雪が先程のレンの行動に納得し、彼女はそれに頷く。

「分かった。そういうことなら頼む。但し、七海の言うように深追いは禁物だ。」

鶴丸な言葉にレンはしっかり頷きを返す。

「勿論。時間も無いですし、見たらすぐに戻ります。念の為、周囲には警戒しておいてください。」

レンはすっと席を立ち上がると、周囲に目を配りながら歩いていった。
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