第64章 演練大会ー2日目ー
「ねぇ、レンには悪いけど、この試合棄権した方がよくない?」
ぽつりと呟かれた言葉に、加州の右隣にいた鶴丸は少し瞠目する。
「まぁ、トラブルを避けようと思ったらそれも悪くはないが…。」
鶴丸は頭ではそれは理解できる。
出来るが…。
「…俺は出るぞ。」
加州の左隣にいた大倶利伽羅は、顔を少し顰めて前を見たまま言う。
「俺もどちらかと言えばこのまま出たいな。」
鶴丸もそれに賛同した。
そう。心情としてはこのまま出たいのだ。
「加州の心配も分かるが、相手はルール違反はしないんだろう?」
「それはそうだけどさ…。」
薬研が後ろから身を寄せて加州に問い返すと、彼は少し口を尖らせながら姿勢を崩した。
「私もどちらかと言えば棄権したいですが、貴方方が出るのであれば私も出ます。」
「僕も兄様が出るなら出る。」
江雪と小夜も、加州の後ろの席から言う。
「俺だって、伊達組が出るってなら出るよ。けどねぇ、って話だよ。」
加州はジト目で鶴丸を見上げると、彼は困ったように笑った。
「加州の心配は分かってるさ。けれど、俺達はどんな敵が立ち塞がろうとも戦いたいのさ。」
加州はそれを聞いて、大きくため息をついく。
次いで、ゆっくり席を立った。
「どこに行くんだい?」
燭台切が尋ねると、加州は口を尖らせたまま彼を向く。
「ちょっとトイレ。」
「いってらっしゃい。」
苦笑気味に送り出す燭台切を見てから加州は歩き出そうとして、やっぱり戻る。
「ねぇ。念の為、これ預かってくれる?」
加州は自身の腰から刀を外すと燭台切に預けた。
「…丸腰で大丈夫かい?」
「寧ろ、知らない内に本体に細工されてました、って方が怖いから。肉体の方だったら、細工されても感覚で分かるでしょ?」
「成程ね。OK。ちゃんと預かっておくよ。」
「ん、お願い。」
加州は今度こそ席を立った。