第64章 演練大会ー2日目ー
『その様子だと噂は知っているようね。
私も詳しくは知らないけれど、前からいい噂は聞かないの。』
そう言って、七海は一度言葉を切る。
『私達は幸いにも当たったことがなかったから、あくまで人から聞いた話よ。』
「構いません。」
『対戦した人が言うには”嫌な感じがする”って、刀剣達が言うらしいの。』
「嫌な感じ、ですか。」
『ええ。そして、26番の子達は年々性格が荒んでいるらしいの。』
「…それは何とも、大雑把ですね…。」
『そうね…。具体的にはこれといった違反はしないのよ。けれど、通常よりも力が強いし、動きも早い。それと、やり口が卑怯らしいわ。』
「そうですか…。」
七海には悪いが、その情報では曖昧過ぎて、今ひとつ対策が立てられない。
『刀剣は、どこの子を見ても性格は似たり寄ったりで素直な子が多いの。だからこそ、26番の本丸は異質なのよ。
それが細工をしている、と言われる所以なの。』
ふと、レンの中に昨日の会話が蘇る。
“審神者の俺達でさえ、よくよく見ないと分からないレベルだもんな。”
「…それって、見れば分かります?」
『状態異常を?』
「はい。」
レンの言葉を受けて、七海は暫し考える。
『…そうね。感覚なんて人それぞれだから何とも言えないわ。
けれど、”邪気が見える”あなただったら分かるかもしれないわね。』
それを聞いて、レンは僅かに笑う。
「…分かりました。情報ありがとうございます。」
『いい?決して無理をしないこと。危ないと感じたら引くこと。それを刀剣達によくよく言い含めなさい。』
「はい。言っておきます。」
『深追いは禁物よ。』
「分かりました。」
『じゃあ、健闘を祈るわ。』
そう言って電話は切れた。