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君に届くまで

第14章 薬研藤四郎の目覚め



「その時から私は自分の感情が上手く感じ取れなくなりました。でもそれで良かったんです。感情の無い忍を作ることが目的だったから。
だけど私には副産物が残った。私は血を見れない。人が血を流して死んでいくのを見るのが怖い。忍としては欠陥品なんです。」

そう言って自嘲気味に笑う。

血を見るとすくんでしまう。
体が震えて上手く動かせなくなる。
みっともない。
情けない。
これじゃ何の為に殺し合いをしたのかわからない。

報われない。

レンは自棄っぱちに瓢箪を呷って一気に飲む。

「欠陥品の私は使い物にならなくて、情報収集に回された。その先は遊郭だった。けど、やってられなくて逃げた。
逃げるうちに一族の跡地に辿り着いて、自分が氷室一族の生き残りだってわかって、氷遁を会得した。
それから火の国に戻って、遺跡調査しながら場所を点々としながら逃げて。
追い詰められて、あの日、時空間忍術で飛んで、今に至る。
以上。」

レンは一息で説明すると、ごろんと寝転がった。
どうやら酔いが回ったようだ。視界がぐらんぐらん揺れている。だが、ふわふわして気持ちがいい。

「…そんなとこで寝てたら風邪ひくよ。」

「いいさ。今は宿があって布団がある。寝てれば治る。」

レンは、半ば自棄になって答える。

「いや、ダメだから。ちゃんと毛布かけないと。」

燭台切はそう言うと、隅に畳んである布団から毛布を引っ張り出すと、レンにかけてやる。

「…世話好きですか?」

「いいや。君が手がかかるんだよ。」

「そうかな?」

「そうだよ。」

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