第14章 薬研藤四郎の目覚め
「私は育成の為、同じ年代の子とツーマンセルを組まされました。修行をするのも寝起きも任務も何もかも一緒です。」
「どんな子だったの?」
「どんな子…うーん…面倒見が、悪かった、ような。あと、正義感が強かった?ような…。あと、無口だった…。それから、それから…。」
レンは少し俯いた。
「強かった。凄く。体術も忍術も敵わなかった。いつも勝てなかった。」
レンはその時を思い出す。
あと一歩敵わない。自分が進んだ分だけ相手も進む。永遠に敵わないんじゃないかとさえ、思ったことがある。とにかくリヨクに追いつこうと必死だった。
「楽しかった?」
「え?」
「敵わないって言いながらも嬉しそうに話すから。」
「たぶん、楽しかったかな…。よく覚えていないんです。もう、10年以上も前の事だし…。
…それにもう死んじゃってるから。」
「どうして?」
燭台切が問うと、レンの瞳にすっと影が差す。
「私が殺したんです。
命令でしたから。殺し合いをし、生き残った方が暗部に行く。」
燭台切はレンを見て息を呑む。
そんな過酷な経験をした人間がいるなんて、思いもしなかった。何より気になったのは、まるでレンは他人事のように話すのだ。
辛く、ないのだろうか。
悲しくないのだろうか。
そう思うのに、燭台切は言葉が出ない。
「まぁ、そういう反応しますよね。普通。」
レンは苦く笑う。
「里を出てから知りました。これが普通の出来事じゃないって。でも”根”で育った子供たちは当たり前に通る通過儀礼でした。」
またぐいっと酒を呷る。