第14章 薬研藤四郎の目覚め
「君は、忍の里で生まれたの?」
空を見上げながら、燭台切は問いかける。
レンは横目でちらりと燭台切を見て、瓢箪を傾ける。
ーここは前の世界じゃないし、話したところで素性は木の葉にバレることはない。
少しくらいいいか。
「育ちは木の葉ですが、生まれは北方の集落です。おそらく。」
「おそらく?」
「私、幼い頃の記憶が無いんです。
一番最初の記憶は、森の中で何かから逃げ惑う所で、逃げた先にいたのが、木の葉の里の3代目火影様だったんです。私、孤児だったんです。」
「火影様?」
「木の葉の里の一番偉い人です。」
「レンちゃんは何から逃げてたの?」
「わかりません。”後ろから怖い何かが追いかけてくる”としか覚えてませんので、何処をどうやって逃げてきたのか、何があったのか、全く覚えていないんです。」
燭台切は静かに驚いた。
「大変だったんだね…。」
「…そうでしょうか?あの当時、戦争が漸く落ち着いたばかりの頃でしたし、私のような親無しは割といましたよ。私は運が良かったんじゃないですかね。」
人間の事はわからないが、そう簡単には言えることじゃない、と燭台切は思う。
「…どうして、忍になったの?」
燭台切が問うと、レンはぐいっと瓢箪を傾ける。
「…木の葉の裏の組織、”根”に売られたんです。
ダンゾウは孤児院に寄付する代わりに秘密裏に子供を引き取り、優秀な部隊を育てていたんだそうです。」
そう言ってまたぐいっと酒を呷る。
そんなに一気に呑んで大丈夫かと思うくらい、どんどん飲み進める。月光ではわかりづらいが少し顔も赤くなり始めているようだ。