第63章 演練大会ー1日目ー
暫く控室にてまったりしていると、来訪を知らせるチャイムが響いた。
『大会委員の者ですが、38番本丸のレン様は在室されていますか?』
ドアの近くのモニターに女性が映し出された。
レンはモニターの方に近づくと、すぐ横にあるドアの施錠ボタンを解除した。
フィン、と音がした後、ドアがすっぽり空洞になり、そこからにゅっと女性が入ってきた。
失礼します、と言って彼女は部屋をぐるりと見渡すと、レンに向き直る。
「レン様でお間違いありませんか?」
「はい。」
「エントリー用紙を回収しに来ました。今、お持ちですか?」
その言葉を受けて、燭台切が手持ちのカバンからファイルを取り出して女性に渡す。
「これがそうだよ。」
「ありがとうございます。確認させていただきます。」
そう言って、名前と人物を確認していく。
「燭台切光忠が近侍として同行、ということでお間違いないですか?」
「そうだね。合っているよ。」
「畏まりました。ではそのように受付をさせていただきます。」
そう言いながら、手元のパソコンで何やら入力していく。
「これで受付は完了しました。
只今より奥のお部屋も使用可能となりましたので、大会終了までご自由にお使いください。
何か不明点などはございますか?」
「ありませんが、分からないことが出てきたら誰に聞いたらいいんですか?」
レンは逆に問いかける。
「でしたら、こちらのモニターから、フロントスタッフに繋がるようになっていますので、まずはそちらに問い合わせしてみてください。」
「モニター…、ですか。」
レンは電子機器に苦手意識がある。
彼女は、すっと燭台切を見た。
それを見た燭台切はくすりと笑う。
「OK。代わるよ。
ごめんね。僕に教えてくれる?」
「畏まりました。まずはこちらを押していただき…」
女性が燭台切に教えるのを少し離れたところから見る。
よく覚えられるな、と感心していると、
「がんばって覚えろよな。」
「レンはまだ若いんだから。」
鶴丸と加州に揶揄われた。
「いや、無理なものは無理です。」
見た瞬間投げ出す自信がある、とレンは本気で思うのだった。