第63章 演練大会ー1日目ー
「まぁ、誰が出ても構いませんよ。褒賞が出るわけでもなし。タダ働きに等しいですからね。」
「…やる気がなかったのはそういう訳か。」
芋の煮っ転がしを口に頬張りつつ、気のないことを言っている主に歌仙は頭を抱えた。
レンの近くまで来た乱は、彼女の後ろに置かれた書類を拾い、もう一度目を通し始めた。
「あれ?ねぇ、ここ見て。」
「なになに?」
乱と一緒に書類を見ていた大和守は、彼が指差す所を読み上げる。
「”上位10組には、賞金として米10kgを10袋差し上げます。更に順位に応じた商品をご用意しております。”だって。」
「米10kg×10…。」
それを聞いたレンは、ゆっくり振り返りながら呆然と呟く。
ー褒賞なんてあったのか…!
「真面目に選びましょう。」
レンは慌てて書斎部屋へ走り、戦績帳を広間に持って来ると、ひっくり返した。
「…ちゃっかり餌に引っかかってやんの。」
厚は呆れながら、レンを見遣った。
真面目に協議した結果、残り2枠は江雪と小夜が選ばれた。
燭台切はレンの付き添いで一緒に行くことになる。
「残念だったな、みっちゃん。」
太鼓鐘が燭台切を見上げて言うと、彼は首を横に振る。
「いや、寧ろこのポジションの方がいいよ。何せレンちゃんが行くんだ。付きっきりで見守れるのは有難いよ。」
「はは…。信用ないな、レン…。」
太鼓鐘は乾いた笑いを零した。