第62章 バーベキュー ーその2ー
鹿は落とし穴を通り、倒けつ転びつ必死で逃げる。
「落とし穴、嵌まんなかった…!」
厚は悔しがるが、言ったところで詮ないことだ。
狩りは結果が全て。
途中でロープが上手く引っかかり、罠が発動する。
だが、斜め前方から飛んでくる丸太を、鹿は野生の勘で避けてしまう。
「どわっ。」
4人もすれすれで回避する。
怖いと思っている暇もない。
鹿は止まることなく逃げて行くのだから。
「加州!行ったぞ!!」
薬研の怒声に待機していた3人が刀を構える。
「まっかせて〜。」
「僕が出る。」
小夜は言うや否や飛び出して行く。
真正面から鹿とかち合うと、体勢を低くして体を捻りながら首元に刀を突き立てた。
「くっ…!」
だが、それほど深く入ることなく逃げられてしまう。
「安定行くよ!」
「了解!」
加州と大和守は茂みから飛び出すと挟み撃ちの配置を取る。
「可哀想だけど!」
「悪く思わないで、ね!」
2人は同時に強烈な突きを、鹿の首元目掛けて打ち込んだ。
「キュイィィィ…!!」
鹿は、甲高い断末魔ともとれる嘶きを上げて、最後の抵抗とばかりに暴れ狂う。
「わっ…!」
「うそっ!」
加州と大和守は慌てて刀を抜いてその場から離れた。
「あ!まずい!川に入るぞ!」
厚の叫びに応じるように、先回りした乱と五虎退が躍り出るも、決死の抵抗をしている鹿の目には入らない。
「と、止まってください!」
「どうやって止めたらいいの!?」
角を振り回している状態で向かって来られても、どう止めたらいいのか分からない。