• テキストサイズ

君に届くまで

第14章 薬研藤四郎の目覚め



レンは、その日一日を何となくぼんやりと過ごした。
何故違ったんだろう、と考えていたからだ。

しかし、よくよく考えてみれば至極当たり前のことだったかもしれない、とレンは思う。

五虎退とレンは性格がまるで反対だ。
五虎退は落ち込みやすいが、レンは多少の事には動じない。
薬研も同じだ。
薬研は兄貴肌なかんじがするが、リヨクは面倒見はあまり良くはなかった。どちらかというと、置いていかれたくなければ死ぬ気でついて来い、とか言いそうだ。

五虎退とレン、薬研とリヨクで性格が違う。性格が違えば出す答えも、感じ方も違って当然なのだ。

リヨクは必要があるからレンを生かしたのだろう、と今でも思う。”生きろ”と言ったそれは、”生きて木の葉の役に立て”ということなんだと。

やはり自分はここに居るべきではない、という思いが強くなる。

ー早く戻らなければ…。

けれど、もう打つ手がない。

ーどうしたら…。

ぎしり、と近くから足音がして、反射的にクナイを握る。
音のした方を見ると、すぐ近くに燭台切が大きな瓢箪を2つ手に吊し、盆を持って立っていた。

「月見酒、しようか。今日は綺麗な満月だから。」

レンは驚いた。

「はい、一つあげるよ。酒好きの刀剣の、とっておきの隠し酒なんだ。」

そう言って、瓢箪を1つ差し出してレンの隣に座る。

「…隠し酒?」

聞いたことない言い回しに、レンは不思議そうに尋ねる。すると燭台切は少し笑いながら答えた。

「そう。人数が多いとね、普通に置いとくと他の人に飲まれちゃう事が多々あってね。それで、他の人にわからないようにバレないように隠しておくんだ。それで自分が飲みたい時に味わって飲む。だから隠し酒。」

「…でも、バレてませんか?」

レンは手元の瓢箪を揺する。

「見つかったら負けなのさ。」

燭台切は楽しそうに答えた。
レンは若干呆れながらも有り難く頂戴する事にした。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp