第62章 バーベキュー ーその2ー
「わっ、凄い。何か感覚が違う。」
乱は手を開いたり閉じたりする。
「何か小さい音がよく聞こえます。」
五虎退は音を拾っているのかきょろきょろと辺りを見回した。
「体がいつもより軽い…?」
「だな。なんか動きたくなる。」
小夜、厚は自身の体を確かめるように動かしている。
他の面々も体を不思議そうに確かめている。
概ね成功したのを見て、レンは影分身を解く。
「さて、時間もないのでぶっつけ本番で行きます。」
「って言ってもさ、何探せばいいか分からないよ?」
加州が困ったようにレンを見た。
「一番大きな目印は木の皮の食み跡ですかね。あとは木に擦り付けた後に残る毛玉か。時々浅い洞窟を寝ぐらとする時もあるのですが。」
「その近くにいるの?」
小夜が尋ねる。
「大体は。」
「けど、毛玉とかはさすがに見落としそう…。」
「だな…。」
大和守の呟きに薬研も同意する。
「まぁ、殆ど運ですよ。それにこれだけ人数がいるんですから、痕跡よりも実物探した方が早いです。」
「成程な。それで体力強化か。」
「はい。とにかく、各自まっすぐ走って探してください。」
「レンは前、どこで狩ったの?」
加州が尋ねる。
「ここからやや北東の近辺、といったとこでしょうか。けど、前回と同じ場所にいるとは限らないですよ?」
「わかってる。参考までにってことだよ。」
「あと、これを渡しておきます。」
レンはそう言って、花火の様な筒状の物とライターを手渡していく。
「…何これ?」
「狼煙です。鹿を見つけたら少し距離を置いてこれを打ち上げてください。それを目印に集まりましょう。」
「「「了解!」」」
「では、解散。」
それを合図に、彼等は走り出した。