第62章 バーベキュー ーその2ー
「「「「え…?」」」」
事情を知らない面々は、唖然としながら乱を見て、レンを見た。
「うそだぁ。」
鯰尾が少し笑顔を引き攣らせた。
「いや、嘘ではないです。
じゃなくて。鹿を獲って来ないんだったら肉は何処から調達するんですか。」
レンは脱線した話を戻した。
彼女の答えに呆然と固まった面々はこの際置いておく。
「牛肉でも買ってくればいいんじゃないか。なんだったら豚でも鶏でもいいけど。」
「いくらすると思ってるんですか…。」
厚の適当とも思える言いように、レンは頭を抱えた。
審神者としてはまだまだ駆け出しで、懐事情は決して豊かとは言えない。節約は当分必須だ。
「大将が一頭くらい狩ってきてくれりゃあ、節約になるんじゃないか?」
「簡単に言わないでくださいよ。あの時は、ここに来る途中でたまたま寝ぐらや足跡を見つけてたから簡単に仕留められたんですよ。」
そう。本来は、狩りはとても面倒な作業だ。
先ずは気配を殺しながら森を歩いて、獣の痕跡を探すところから始まる。
痕跡を見つけたら注意しながら辿り、獲物を見つける。
姿を見失わないように距離を取りながら、仕留める場所(ポイント)を割り出す。
見失わないように、獲物とポイントまでの障害物を出来るだけ取り除き、必要ならば罠も張る。
ここまで出来れば後は追い立てるだけだ。
逆を言えば、追い立てるまでの行程が、くそめんどくさい。
百歩譲ったとして。罠を張ったり、障害物を取り除くのも、まぁいいだろう。時間との勝負ってだけだから、余程のことがない限り手間取ることはない。
問題は痕跡を探す行程が長いのだ。見つからないことだってざらだから嫌になることだって多々ある。
それを一からやろうと言うのだ。
どうしたってげんなりしてしまう。
そう考えたところで、はた、と薬研達を見る。
ーそうか、彼等にやって貰えばいい。
気配を消す、相手の動きを読む、等々…。狩りは修行には打って付けである。