第62章 バーベキュー ーその2ー
「レン〜!頼まれとった書類まとめ終わったぜよ!」
道場の入り口から声がかかった。
今日の近侍は陸奥守だ。
「ありがとうございます。もう少ししたら部屋に行くんで、少し待っててもらっていいですか?」
「やったら手伝うちゃるよ。」
陸奥守はそう言って、中へと入ってきた。
「やけんど、凄い有り様やな。まるで派手に暴れた後みたいな。」
陸奥守は少し笑う。
当事者ならばいざ知らず、今は他人事なので屍と化している彼等の様子が少し面白いのだ。
「暴れてはいませんよ?乱達のスタミナ切れです。」
レンは集め終わった木刀を陸奥守に渡す。
「陸奥さんは、木刀の片付けをお願いします。私は、雑巾掛けするんで。」
だが、陸奥守はあからさまにムッとする。
それを見たレンは、はて、と首を傾げた。
「呼び名、戻っちゅーぜよ…。」
あぁ、とレンは納得する。
彼の名前は確か…、
「吉行、さん?」
呼ぶと、すぐにいつもの快活な笑顔が戻ってくる。
「呼び捨てでええぜよ。」
「吉行…、お願いします。」
レンが少し呼びにくそうに言うと、陸奥守は笑った。
「おうよ、任せちょけ!」
陸奥守が壁の刀掛けの方に向かうのを見てから、レンは十字の印を組む。
「影分身の術。」
すると、ボボボン!という音と共にレンが数体現れる。
影分身は、それぞれ乱達に付き、脇を抱えて壁際に移動させた。
そして、戸棚からバケツと雑巾を人数分用意し始める。