第61章 主の弱さ
私達は、また一口酒を含む。
「…何で…。何で、帰らなきゃならないって、思うんだ?」
「それが…、兄弟の…。リヨクへの罪滅ぼしになると、思うからです。」
言っていて思った。
罪滅ぼしになるって思ってるくせに、帰りたくないってどういうことだ、と。
矛盾してるな、と思ったら自然と笑えてきた。
歪な顔してるんだろうな、今…。
案の定、伽羅さんは痛ましげに私を見る。
そして、何故か言い淀んでから、また口を開いた。
「…血を見れないって、聞いた。光忠達から…。」
あぁ、そうか。
昼間、変な態度だったから…。
「昼間は…、すみませんでした。血を見るとどうしても体が強張ってしまって…。」
言ってて情けなくなるけど、こればっかりはどうしようも出来ない。
「それは、いい。…それより、大丈夫なのか?」
「あぁ…。はい、もう大丈夫です。」
逆に心配されて面食らう。
何か、調子狂うな…。
「傷はもう大丈夫なんですか?かなり大きな怪我みたいでしたが。」
昼間の光景が甦りそうになって、思わず背がぞくりと泡立った。
私は内心を押し隠し、努めて平静を装う。
「あぁ、傷はもう無い。」
「そうですか。治って良かったですね。
本当にあなた達が人間でなくて…。」