第14章 薬研藤四郎の目覚め
レンは泣きじゃくる五虎退の様子をぼんやりと眺める。
“ごめんなさい”、か…。
もしリヨクが生き返ることがあったら、と考える。
ごめんなさい、は違う気がする…。
ありがとう、もなんか違う…。
確かに”殺してごめんなさい”は思わなくもないが、正直あの状態でリヨクを気遣う余裕があったかと言われれば、皆無だった。そんな余裕があればもっと違う道を選べただろう。
“譲ってくれてありがとう”はあまり思いたくない。
当時リヨクの方が実力が上だった。生き残るべきはリヨクだったと今でも思う。
何だろう、思ってたのと違う。
知りたかった答えに辿り着けると思ったのに、より分からなくなった。
「…ちゃん…、レンちゃん!」
肩を揺すられ、ハッとする。見ると燭台切が心配そうにレンを見ている。視線を動かすと五虎退と鳴狐も近くまで来ていた。
「…主様、お疲れですか?」
「寝不足ですかね。」
「今日はもう休むかい?碌に寝てないだろう?」
三者三様の心配をレンに向ける。
「まぁ、寝不足は否めませんが。然程心配する必要はありませんよ。」
「けれど、話しかけてもお返事がありませんでしたし…。神気の遣い過ぎではありませんか?」
五虎退が眉尻を下げて心配そうに覗き込む。
「それは失礼しました。で、何の話でした?」
「薬研兄さんを治してくださりありがとうございます。って話でしたが…。」
「それでしたら問題ありません。ほぼ自分の為ですし、あなたと私の利害が一致したってだけですよ。」
「だとしても、ちゃんとお礼がしたいです。
主様、ありがとうございました。この御恩は決して忘れません!僕に出来ることなら何でもします!」
そんな大袈裟な、とレンは困る。
「…まぁ、それ程気になるのであれば”貸し1”ということにしますから、必要な時に返してください。」
「はい!いつでも言ってください!」
満面の笑みが返ってきた。
何だろう、この良心が咎める感じは…。