第61章 主の弱さ
「…月が好きなのか?」
取り止めのない事を考えていたら尋ねられた。
「いや、別に好きでも嫌いでもないです。単純に目に付いたんです。」
「そうか…。」
それきり、また沈黙が流れる。
はた、と気づいた。
この人は何か話をしたいのだろうか、と。
とりあえず、会話をぶった斬るのは不味いと思い、言葉を繋げてみる。
「伽羅さんは、好きなんですか?月。」
「俺も、好きでも嫌いでもない。」
「そうですか…。」
続かなかった。
まぁ、いいか、と開き直ってみる。
『聞かせてよ、思ってること。どんなことでもいいからさ。』
いつかの乱の言葉を、ふと、思い出す。
自分の気持ちを言葉にするのは難しい。
けど、さっき思ったことなら言えるかもしれない。
「…月って…。」
話しだして、それが取り留めのないどうでもいい話だと、思い出した。
こんなこと言ったってどうしようもない。
「…月が、何だ?」
「いや…、やっぱり…」
「思ってること、あるんだろう?」
乱と同じようなことを言われて、驚いて伽羅さんを見る。
「言えばいいだろう。」
そう言われて、何だかこそばゆい気持ちになり、伽羅さんから視線を外してしまった。
私はまた、空を見る。