第61章 主の弱さ
バタバタバタバタ…
騒々しい複数の足音に目が覚めた。
どうやら寝ていたらしい。
「レンちゃん待って!」
「主様!」
バタン!
乱雑に開け放たれた障子の方を向くと、レンが立っていた。
光忠と五虎退も側にいる。
けれど、いつもと様子が違う。
レンは入り口で呆然と突っ立ったまま中に入ろうとしない。
それを見て、光忠達がおろおろとしている。
何だって言うんだ。
「レンちゃん、出直そう。この光景は君には酷だよ。」
光忠がレンの肩にそっと手を置くと、びくりと大きく肩を揺らしながら素早く光忠の方を向いた。
怯えている…?何で…。
レンは光忠の手を押し退けて首を横に振ると、ゆっくり部屋の中に入って来た。
「…重症の人は…誰ですか…?」
いつになく覇気のない声だった。こちらが不安になる程弱々しい。
「…伽羅坊だ…。あと、小夜と歌仙…。」
入り口近くにいたらしい鶴丸が答えた。
レンはそれを聞くと、のろのろとしたぎこちない動きで手入れの準備をしはじめた。
光忠と五虎退は、レンを見かねて手伝い出す。
竈門に火を入れ、裏山の沢で汲んだ清流水を桶に張る。
いつもなら、さっと出来る筈のその作業が全く出来ず、殆どを光忠達に任せきりになっている。
準備が出来ると、レンは葛籠から手入札を出して、俺に近付いて来た。