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君に届くまで

第61章 主の弱さ



そろそろ体が限界に近付いている。
数はだいぶ減らした。
その分、擦り傷だがだいぶ傷も負った。
1体でも先へは通せない。
通せば大きな被害が出てしまう。

「お小夜!!」

悲鳴に近い叫び声が聞こえて咄嗟にその方を向くと、小夜が体を貫かれ、倒れるところだった。

息を呑んだ。

あのままでは危ない。そう思うのにわらわらと集まる奴等を退かすことが出来ない。

「…くそっ…!」

「歌仙!!」

そうこうしている内に歌仙がやられたらしい。

「鶴丸!!よせ!!」

鶴、丸…?

はっとしてそちらを見ると、横っ腹を差し貫かれた鶴丸が目に入る。

だめ、だ…、だめだ…!よせ!やめろ!

そこからは無我夢中だった。
早く、早く駆けつけなければ。それしか頭に思い浮かばない。片隅で眠り続けていた貞の姿がよぎっていた。
体のあちこちに痛みが走るが気にも留めていられない。



「伽羅坊!」

気がつくと、怪我を負った筈の鶴丸に体を支えられていた。
戦況は、どうなったんだ…?

俺は改めて辺りを見回そうとすると、動くな、と鶴丸から言われてしまう。

「大丈夫だ。時間遡行軍は全て倒した。凄かったぞ、伽羅坊。」

「大倶利伽羅、戻りの札はどうした?」

三日月に問われて、のろのろと上着の内ポケットを探る。
今更ながら体が痛くて怠い。

「俺がやろう。」

三日月が代わりに札を出してくれた。

「皆、集まれ。本丸へ戻るぞ。」

三日月が札に神気を流すと、足元に円形の方陣が浮かび上がる。

「うっ…。」

痛みがどんどん増していく。
くらりくらりと視界が揺れている。

眩い光に包まれて次の瞬間には本丸の転移装置に戻っていた。
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