第61章 主の弱さ
「集まったな。行くぞ。」
「応!」
俺は第一部隊の面々を見回してから、紙札に神気を込める。
すると足元の方陣が光だし、その内側にいた自分達も光に包まれた。
次いで一瞬体が掻き消えたような感覚に包まれる。
そして、ぱっと目を開けると、そこはもう林の中だった。
「ここがそうか。」
鶴丸が辺りを見回した。
「確か、足利尊氏の暗殺を阻止せよ、だったか。」
「急いで探すぞ。」
「あぁ。」
林を抜けたすぐ先の平地に足利尊氏が陣を構えていた。
辺りは物々しい雰囲気で絶えず人が動いている。
俺達は、周囲を警戒しながら陣を見下ろせる高台へ移動する。そして、木々の間に身を潜めて様子を窺うことにした。
「戦の支度、か。すぐに出るんだろうか?」
「あぁ、そうだろうな。」
御手杵の呟きに三日月が答えた。
「いた!時間遡行軍だ!この林の奥!」
小夜が勢いよく駆けて来た。
「どこだ!?」
「こっち!」
小夜は陣の裏手側の林を指差し、皆で走り出した。
すると程なくして、時間遡行軍が見えてきた。
太刀や大太刀が多い。
ちんたらしてたらこちらが力負けする。
「一気に行くぞ!」
「「「応!」」」
気づいた時間遡行軍が唸り声を上げて抜刀しはじめた。奴等から殺気が漂う。
キン!キンキン!
打ち合いが始まる。
右、前、右、左…。
太刀筋を見抜けない訳じゃない。
だが、攻撃の合間に繰り出す反撃は悉く避けられてしまう。
「ヴヴゥ…。」
少し、笑った…?
でかい躯体から大きな一撃が降ってきた。
まるで嘲笑われているかのようだ。
負けてたまるか…!
絶対に倒す!