第61章 主の弱さ
「今日の部隊編成を発表します。」
朝の申し送りの時間。
いつものように出陣や遠征の指示が次々と出されていく。
今日は第一部隊として出陣となった。
場所は室町時代の中期。時代が荒れ始める不安定な頃だ。時間遡行軍も手を出しやすいのだろう。
「伽羅坊、今日は一緒だな!」
近くにいた鶴丸が俺の肩を叩いた。
「今日は大倶利伽羅が隊長か。一つよろしく頼む。」
「それで、隊長殿。いつ出立するんだい?」
三日月が柔かに言うその隣で、歌仙が少し不満気に問う。
自分でも少し眉根が寄ったのが分かった。
「…何か文句でもあるのか。」
「ま、まぁまぁ。仲間割れとか色々障りがあるからさ。今日だけは仲良くしようぜ、な。」
「…喧嘩は良くない。」
御手杵と小夜に宥められてしまう。
思わず舌打ちが出そうだったが既の所で堪えた。
今日の戦場は特に油断ならない。気を引き締めなければ。こいつと喧嘩している場合ではない。
「…仲悪かったんですね、2人は。いつからですか?」
急に後ろから声がかかり驚いて振り向くと、いつの間にかレンが立っていた。
心臓に悪い…。
「…別にあんたに関係ない。」
俺は跳ねた心臓を押し隠し、ふいっと視線を逸らした。
それに歌仙が眉を顰める。
「ちょっとそんな言い方…」
「いや、関係あるでしょう。編成組むの私ですよ?」
ちゃんと言っておいてください、と言いながら自分のメモ帳に書き始めた。
…それでいいのか、審神者。
俺が言うのもなんだが、もっとこう…。
「…もっと仲良くさせなきゃ、とか、ないのかい?」
歌仙が俺が思っていたことを尋ねる。
「いや、特には。とりあえず派手に喧嘩しなければそれで。
今日はもう組んじゃったんで我慢してください。くれぐれも内輪揉めで撃沈、なんてことにはならないでくださいね?」
そう念押しして、そのまま部屋を後にしてしまう。
「「「……。」」」
敢えて言う。
それでいいのか、審神者。
俺達は顔を見合わせ、一斉にため息をついた。