第60章 主と酒と
「「え〜!!」」
「見たかった!」
「残念です。また一緒に呑めるといいんですが…。」
近くからそんな会話が聞こえてきて、ぱちりと目を開ける。
いつの間にか、近くに人が集まっていて雑談していた。
どうやら少し寝ちゃったらしい。
「寝ぼけてるレンがあんなに可愛いなんて、ほんとびっくりだよね。」
大和守がにやにやしながら主に言うと、彼女は嫌そうに顔を顰めた。
「…私が寝ぼけてる時にしたことって本当にそれだけですか?」
「うん、可愛い笑顔見せてくれただけ。」
大和守の答えを聞くと、あからさまにほっと胸を撫で下ろした。
何をそんなに気にするのだろう…。
「ねぇ、また一緒に呑もうよ。大丈夫だって、変なこと聞かないから。ね?」
大和守が酒の誘いをする。
それは是非とも押せ押せで誘ってほしい。
「ボクももっと一緒に呑みたい!」
「ぼ、僕もです!」
乱と五虎退も一緒にせがむ。
主は微妙な顔付きで彼等を見た後、やれやれといった風にため息を零した。
「…考えておきます。」
「「「やったぁ〜!!」」」
本当に押しに弱いのね、この子。
思わず、くすりと笑ってしまった。
「起きたか。旦那、調子はどうだ?」
薬研がアタシを覗き込んだ。
吐き気は…。うん、大丈夫そうだ。
アタシはゆっくり身を起こす。
「さっきよりだいぶいいよ。ありがと。」
「そいつはよかった。」
本当に薬研がいて助かったわ。
「これ、薬草茶だ。酒を体から抜いてくれる効果があるんだ。」
湯呑みに渡されたお茶は、麦茶のような色合いの極普通のお茶に見える。匂いは独特だが然程気にならない。
「いただきます。」
アタシは一口飲んで、止まらず一気に飲み干した。
どうやら喉が渇いていたらしい。
胃に染み渡る〜。