第60章 主と酒と
「…もうちょっと愛想があってもいいんじゃないか?」
思わず小さく呟いた。
いつも思うが、彼は物言いや態度が少し冷たいのだ。
すると頭上から、ごめんね、と声がかかった。
燭台切だ。
「ああ見えて、優しい人なんだよ、伽羅ちゃん。レンちゃんと同じでね、冷たく見られることが多いけど。」
見上げると、困ったように笑っていた。
まぁ、人は見かけによらない、というのはレンのことでもよく分かったが。
「これに懲りずに仲良くしてくれると、僕は嬉しいよ。」
穏やかに笑うその顔に、なんだか毒気が抜かれてしまった。
僕はため息をつくと、再び大倶利伽羅を見遣る。
いつか僕も、彼と笑って酒を酌み交わすような、そんな日々が来るのだろうか。なんだか想像がつかないが…。
けれど、それも僕の心一つ、なんだろうな。きっと。
だって、彼と親しい燭台切がそう言うのだから。