第13章 薬研藤四郎の手入れ
「おはよう。ご飯持ってきたよ。」
燭台切が声をかけながら襖を開け、入ってくる。
「何かあったの?」
燭台切は泣いている五虎退と鳴狐を見て顔を険しくする。
お付きの狐は困ったように鳴狐と燭台切を交互に見るだけで何も言えなかった。
「おはようございます。完治しましたよ。」
燭台切は驚いた。
あの状態から1日で治るものなのか?
真夜中に見せてもらった時には、まだまだ傷だらけだったのに。
「まさか、一晩中やってたのかい?」
「まさか。あれから割とすぐにチャクラ切れを起こし、気を失いましたから。でも起きたらもう殆ど治っていたんです。
念の為お聞きしますが、燭台切が何かしたんですか?」
「いいや。僕は何もしてないよ。夜中におにぎりを持ってきたきり、この部屋には入っていない。」
そうですか、と答えがわかっていたかのような様子を見せ、レンは言葉を続けた。
「2人が言うには”一兄”という人が薬研に”体を分けてくれた”らしいですよ。」
「一期君が…?でも彼はもう折れて…。」
燭台切は言葉を失う。
「折れた?」
「うん、だいぶ前にね。二代目の審神者の時だったかな。」
「戦かなんかで?」
レンの問いに燭台切は顔を硬らせてゆっくりと首を横に振り、俯いた。
「…前に話しただろう?審神者が禍ツ神に殺されたって。あれ、一期君なんだ…。彼は禍ツ神になって審神者を殺した…。一期一振。彼等のお兄さんだよ。」
レンは驚きで固まった。
それってつまり、五虎退達が見たのは夢枕…?
「なら、薬研を治したのって本当に折れたはずの一期一振…?」
「わからない。けど、不思議なこともあるものだね。」
ふと、薬研から声がした。見ると瞼が揺れている。時期に目を覚ましそうだ。