第60章 主と酒と
「レン…。」
遂に潰れたレンはその場でひっくり返ったように仰向けに寝てしまっている。
少し揺すってみたが、起きる気配はない。
「俺もレンと呑みたかったんだがなぁ。」
そんなレンを見ながら、鶴丸が残念そうに呟く。
手元の徳利が2本、既に空になっている。
「はっはっは。俺達が来て早々に潰れてしまったな。」
三日月も誰に何を言われようが自分の好きなペースで呑み進めていた。
「僕だって呑みたかったよ。」
僕は少しの恨めしさを乗せて、じとりと次郎さんを見る。
「ごめんって!ついね、つい。だって〜、あんまりにも面白いんだもん!」
次郎さんはいつにも増してご満悦だ。
それはそうだろう。殆どが彼の独占だったのだから。
僕も優美にお酒を嗜みながら語らいたかった。
「それにしても数奇な運命だよね。突然こちらに飛ばされなきゃ向こうで大活躍だったろうに。」
次郎さんがレンを見ながら言う。
「まぁ、そうだろうな。聞き齧りだが、襲われても負けなしだって言うじゃないか。」
「時間遡行軍も簡単に倒しちまうかもしれんな。」
「壁は登れる、腕は立つ。更には向こうでも特殊な部類の氷が使えるとなれば、誰も放っとかないだろうな。」
御手杵、陸奥守、日本号さんが言葉を繋ぐ。
「成る程、確かにそうかもしれないね。」
主は忍だ。
僕等とは戦闘系統が違う。
だが、確かに主程の腕があれば食うには困らないかもしれない。