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君に届くまで

第60章 主と酒と




「なんだなんだ?今日は宴か?」

鶴丸がアタシ達の側に来て楽しそうに机を覗き込む。
その姿は真っ白な戦装束だ。
どうやら戦場から帰って、そのまま広間に来たらしい。

「あら、おっかえり〜!」

「ふむ。何やら楽しそうだな。」

三日月も笑いながら鶴丸の後ろから現れた。
相変わらず、目の冴えるような鮮やかな青衣だ。

「あんた達も呑むかい?」

アタシは今にも寝落ちしそうな主を引き寄せて、熱燗を振る。

「お、いいねぇ!それにレンも一緒に呑んでるなんて珍しいな。」

鶴丸が嬉しそうに顔を綻ばせた。

「おぉ〜!第一部隊のご帰還ぜよ!」

「今日の英雄達だ〜!」

すっかり出来上がっている陸奥守と御手杵は、上機嫌に鶴丸達を迎え入れる。

「よし、俺も混ぜてくれ!」

鶴丸が目を輝かせて熱燗に手を伸ばそうとしたところに、彼等の後ろから声がかかった。

「ちょっと、こら。せめて着替えておいでよ。」

歌仙だ。彼は行儀が悪いとばかりに鶴丸を止めに入る。
相変わらず、世話を焼くの好きねぇ。

「平気、平気!」

「なに、少し汚れたくらいだ。然程気にすることもない。」

三日月も加勢する。彼はにこやかに笑って返して、陸奥守と兄貴の間に腰を下ろした。

鶴丸も同様に御手杵の隣に腰を下ろした。
2人とも、そのまま宴に混じる気満々である。
こちらとしては大歓迎だ。

「あ、…もう。しょうがないなぁ。」

歌仙は腰に手を当てて困ったように2人を見た。

「まぁ、そう固いこと言わず!あんたも呑むかい?」

「そうちや。おんしも一緒に呑もう!」

アタシ達は口々に歌仙を誘う。

「まぁ、そうしたいとこだけど…。」

そう言いながら、ちらりとアタシの腕を見る。
目線を追うと、主がもう半分寝始めている。
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