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君に届くまで

第60章 主と酒と



「ぼ、僕、雪を降らせてもらったことが、あります。とても綺麗でした!」

いつの間にか五虎退が薬研の隣に座っていて、ほんわかと微笑んでいた。
はぁ〜、雪ときたか。
さっきのを見ちゃうと、出来ないでしょう、なんてことは思わなくなる。

「あ。それボクも見せてもらったことがあるよ!」

乱が手を挙げる。

「え、それ僕も見たい!」

「俺も!」

「レン、見せてくれよ!」

大和守、加州、厚が目を輝かせてせがむが、主は片眉を上げて難色を示した。

「室内で雨を降らすようなものだと思うのですが…。」

「ちょっとだけなら大丈夫!」

乱は身を乗り出した。
主はちろりとアタシ達を見渡した後、胸元に両手を持ってきて不思議な形を作る。
すると、何もない宙からはらはらと雪が舞った。

ほんとに出た!雪だ!
降る雪を手の平に乗せてみると、綺麗な六角形の複雑な結晶がくっきりと出来ている。
小さな芸術品のような、精巧な造りだ。

「こりゃまた…。」

「風流だのう…。」

ほぅ、と彼等も上を見上げて一様に息をつく。
電灯と雪はどこか違和感はあるが素直に綺麗だった。
外で見れば更に綺麗だろうと思う。

「主様の雪は、いつ見ても綺麗ですね。」

五虎退は嬉しそうに笑った。

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