第13章 薬研藤四郎の手入れ
眩しい光でレンは目が覚めた。
いつの間にか夜が明けていて、空には既に朝日が上がっている。
レンは確かに壁に寄りかかって寝たはずなのだが、気づいた時には仰向けで寝ていた。
それ程疲弊したとは思っていなかったのだが、慣れないことをしたが故に無意識に深い眠りになってしまったのだろうか。
レンは首を傾げながらもゆっくりと起き上がる。
続きをしなければ、とレンは刀の側に行く。
チャクラは半分には程遠いが戻っている。
玉鋼を刀の側に置いてふと違和感に気づく。傷が減っているのだ。
「…どういうこと?」
とりあえず、すやすやと気持ち良さそうに寝ている五虎退を起こすことにした。
「五虎退、五虎退。」
体を揺すってみるが、起きる気配がない。
お付きの鳴狐を起こしてみようと、撫でてみる。
すると、むにゃむにゃと言いながら目を半分開けた。
「鳴狐、薬研を見てください。」
「…治ったのですか?」
「まだです。けれど傷が明らかに減っているんです。残り僅かで完治です。
けれど、私は治した覚えがありません。」
「それはどういうことでしょうか?」
お付きの鳴狐はとてとてと、薬研の本体の側へ行く。
「…確かにほぼ治っていますね。本当にあなたが治したのではないのですか?」
「起きたら治ってました。…小人でもいるんでしょうか?」
「…え?」
「冗談ですよ。鳴狐は本当に何もしていないのですか?」
「ええ。していませんね。
あと今更ですが、わたくしは鳴狐ではありませんよ。
鳴狐はあそこで寝ている彼です。わたくしはお付きの狐です。」
「…犬ではなかったんですね。」
「狐です!断じて犬ではありませぬ!」
「冗談ですよ。ほんのジョーク。」
「…あなたは冗談なのか本気なのかわからないんですよ!」
「それは失礼いたしました。」