第13章 薬研藤四郎の手入れ
「…あの、何か…?」
固まった3人に何事かと戸惑い、レン燭台切への返事も忘れて見渡す。
「いやー、あなたも笑うことができるのですねー。」
お付きの鳴狐はしみじみ言うが、レンは首を傾げる。
「笑う?ですか?私が?」
レンには笑った自覚が無いので心底不思議に思う。
楽しかったかと聞かれれば、楽しかったような?
嬉しかったかと聞かれれば、嬉しかったのか?
疑問だ。
まぁ、面白い人達だとは思うが。
「私は嫌われているものと思っていたので、ここで皆さんと食事をしている事が少し可笑しくて。見ていて飽きない人達ですね。」
いや、レンには言われたくはない。と3人は思わなくもなかったが、言うのは止めておいた。
レンは一足先に食べ終わるとまた作業に入る。
「本当に大丈夫かい?」
燭台切と五虎退は心配そうにレンを見る。
「大丈夫です。チャクラもまだ少しあるのでギリギリまで粘ります。」
それを聞いて燭台切はやれやれ、と一つため息をついた。
「…無理だけはしない様にね。」
「はい。あぁ、五虎退と鳴狐は先に休んでください。遠征に備えて体力を回復することを優先さてください。」
そう言うと、黙々と修復作業を続けていった。
それから時刻は丑三つ時、遂に、
「切れた…。」
チャクラ切れになってしまった。
体中が空っぽになった様な感覚だ。
刀を見ると三分の二程は終わっただろうか。
薬研を見ると実態はある。透明化は回避されたらしい。
自身の手元を見るが、ぼんやりしてよく見えない。目が霞んでいるのだと気づいた。
ここまでだな、とレンは重い体を引きずって壁まで這い、そのまま壁に背を預けて眠りに入る。
『おやすみ…。』
誰かの声がした気がする。
燭台切だろうか、でも声がもっと違ったような…。
確認しようとするも、目が開かない。
体が動かない。
意識が…遠の…く…