第60章 主と酒と

それから程なくして、日本号が顕現した。

夕食に現れた彼は、アタシや兄貴を見るとこちらに歩み寄る。

「よぉ。呑んでるな。俺も混ぜてくれ。」

日本号はどかりと座ると、自身の一升徳利を脇に置く。
それを見て、アタシの心は浮き立った。

「あんたもいける口かい？」

「まぁ、そこそこな。うわばみとは言わないがこれ一つなら余裕だぜ。」

言いながら、とんとん、と脇の徳利に手を置く。
それを見て、自然と口の端が上がったのが分かった。

「上出来じゃないか。つまみもたんとあることだし、いっちょ呑みますか！」

兄貴と呑むのも悪くはないが、どうせなら色々な人と呑み交わしたい。

「…程々にしなさい。」

兄貴は諦めたように苦笑を浮かべていた。
その苦言に心当たりは多々あるが、折角の酒の誘いを断る気にはならない。

「まぁ、いいじゃないか。今日は即席の歓迎の宴ってことで。よろしく！日本号！」

「おぅ。俺も呑み仲間が出来て嬉しいぜ。」

日本号はそう言って、蒼いガラス製の盃に注いだ酒を前に出し、乾杯の形を取る。
それににんまりと笑ってアタシも盃を軽く当てた。

「かんぱ〜い！」