• テキストサイズ

君に届くまで

第59章 呼び名



「俺だって五虎退の兄弟だぞ!」

厚が騒動から抜け出してきてレンに詰め寄る。
あの喧騒の中でこちらの会話を聞いていたとは、恐れ入る。

「わたくし達もそれに近いですぞ!」

どこから出てきたのか、鳴狐も身を乗り出してきた。

「…って言われましても。厚さんはそもそもあまり話す機会がありませんでしたし。鳴狐さんは最初、敵意丸出しだったので、なんとなくそのまま。」

思ったままを口にしたレンに、ガンとショックを受ける2人。
レンは、そこまで落ち込むこともないだろうに、と少々困惑する。

「大将、呼び方。」

薬研は、さすがに気の毒になりレンを促した。

「えーっと…。厚、と、鳴狐、ですね。」

レンは思い出しつつ呼び直した。

すると、2人はぱぁっとみるみるご機嫌になり、レンの手をぎゅっと握る。

「わ、わからん…。」

レンは、ぼそりと呟いた。



「ね、ね、今度は安定って呼んでみて。」

レンの横から大和守がひょっこり現れる。
加州といい、大和守といい、何で覚えにくい下の名前で呼ばれたがるのか、とレンは内心げんなりする。

「…”大和さん”の方が…」

レンは言うだけ言ってみるも、

「安定がいいの。」

遮られ、ばっさりと言い切られてしまう。
レンは、折れた方が早いと踏んで素直に従うことにした。

「…安定。」

呼ばれた大和守は、ぱぁっとみるみるご機嫌になる。

「レン!大好き!」

大和守は横からぎゅうっとレンを抱きしめた。
もう、どうにでもなれと言わんばかりに、レンは無抵抗を決め込む。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp