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君に届くまで

第59章 呼び名



「いつ顕現したんだ!?」

「ついさっき。案内がてら散歩していた所だったんです。」

薬研が驚きに声を上げ、それにレンが答えた。

「よろしゅうな!」

「よ、よろしく…。」

陸奥守の手前にいた小夜は気圧されながらも挨拶を返す。

「っていうかそんなにいっぺんに言われても覚えられません。ごっちゃになりそう。」

レンはげんなりしながら無理だと訴えるも、

「そこは覚えて。気力で。」

加州から否を突きつけられる。

「他人事だと思って。特に加州さんなんか…」
「清光。言ってみて、ほら。」

加州は有無を言わせず押し通した。
レンは諦めたように、口をつぐんでから加州の言葉を復唱する。

「…清光。」

清光は湧き上がる幸福感に、満面の笑みでレンを抱きしめた。
レンの声で響く自身の名は、大和守から呼ばれる時とはまた違った幸せがある。

「く、くるしい…。」

レンは降参とばかりに、力任せにぎゅうぎゅうと抱きしめる加州の背中を叩く。

「抜け駆け禁止!!」

「ずるいぞ!加州!」

大和守と鶴丸は手をわきわきとさせながら、加州とレンを引き離しにかかった。

「ちょっと、ちょっと。喧嘩は良くないよ。」

「まぁ、落ち着けって。」

燭台切、太鼓鐘をはじめ、見ていた刀剣達は加州達を止めに入り、もみ合いに発展する。

「はっはっはっ。愉快、愉快。」

「笑ってる場合か!」

面白そうに笑う三日月に、はらはらしながら様子を見守っていた獅子王が突っ込んだ。
その声に、鶴丸、大和守、加州が反応する。


「「「っていうか、元を辿れば三日月が抜け駆けするからだろ!!」」」


彼等は、的を得ているのか外しているのか分からないような言い分と共に詰め寄った。

あ、と思った時には既に手遅れ。あっという間に獅子王も巻き添えをくってもみくちゃとなる。
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