第59章 呼び名
「レンちゃん。三日月さんが名前なら、僕のことも名前で呼んでほしいな。ね、光忠って呼んでよ。」
そんな声が聞こえ、はっとして隣を向くと、燭台切が素直にレンにお願いをしているところだった。
対して、レンは微妙な顔をする。
「…覚えにくいんですが…。」
「まぁ、そんなこと言わずに。」
燭台切はにこにこと笑っているが、何故か雰囲気は硬い。レンは逆らわない方が吉とみて、わかりました、と小さく息を吐いた。
「呼んでみて。」
「…みつ、ただ。」
レンは言い辛そうに辿々しく言った。
すると、ふわっと燭台切の雰囲気が和らぐ。
「よくできました。」
燭台切は嬉しそうに言ってレンの頭を撫でる。
「「「「燭台切〜!!!」」」」
「なに、しれっと甘いことしてるんだ!!」
一度ならず二度までも先を越された鶴丸は悔しそうに燭台切に詰め寄る。
「レン〜。俺も清光って呼んでよ〜。」
加州は恥も外聞もなく、レンに懇願する。
「僕も!安定がいい〜!」
「僕も、小夜がいい。」
「俺も厚がいい!」
「鳴狐も呼び捨てがいいと申しております!」
「俺も貞で!」
「あ、俺も獅子王で。」
「わしゃ、吉行がええな。」
「「「「え…?」」」」
聞きなれない声がして、一斉にその方を振り向くと、陸奥守吉行が快活に笑って手を振っていた。