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君に届くまで

第59章 呼び名



そして、数日後…。


「…なぁ。レンって薬研達以外にはさ、みんな”さん付け”で呼んでるよな。」

唐突に厚が切り出した。
大部屋でテレビを見ていた加州と大和守は、はっとして厚を振り向く。

「…そういえば、そうかも。」

加州と大和守は揃って肩を落とす。

「俺、粟田口だろ?俺だけなんだよ、さん付けで呼ばれてるの。だから気になってさ。」

厚も肩を落としながら言う。

「厚、ここにいたのか。探したぜ。」

噂をすればなんとやら。薬研達が訪れた。

「薬草摘んでこようと思って…ってどうしたの?」

落ち込んでる3人を見て乱が尋ねる。
五虎退はその横で心配そうに彼等を見る。

「いや、丁度お前達の話をしてたんだ。俺だけ呼び方が違うから、何でかなと思ってな。」

厚の言葉を聞き、薬研、乱、五虎退はそれぞれ首を傾げて考えた。

「…そういえば、そうだな。」

「気にしたことなかったから気づかなかった。」

「僕ははじめから呼び捨てだったように思います。」

つまりは記憶に残らないくらいはじめから呼び捨てだった、と…。

加州、大和守、厚は、益々項垂れる。

「どうしたんだい?」

そこへ燭台切と太鼓鐘が通りかかる。

「よぉ、旦那。太鼓鐘も一緒か。」

「レンが呼び捨ての人とさん付けの人で分けてるのは何でかな、って話。」

乱の言葉を聞いて、太鼓鐘は燭台切を見た。

「そういえば、みっちゃんも呼び捨てだよな。」

「そうだね。あの子が来たばかりの頃に、呼び捨てでいいよって言っておいたから。」

燭台切はにこりと笑って答えた。

「仕事が早いぜ、みっちゃん。」

その手があったと言わんばかりに、太鼓鐘は額に手を当てた。
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